CESA(社団法人コンピュータエンターテインメント協会)「オンラインゲーム不正事例報告書」

CESA公式サイトhttp://www.cesa.or.jp/
CESAオンラインゲーム委員会公式サイト「オンラインゲームへの取り組み」http://onlinegame.cesa.or.jp/

本報告書はCESA公式発表のもの(原本はpdfファイル)をテキスト化し転載したものです。


「オンラインゲーム不正事例報告書」
はじめに
日本でも着実な成長を遂げております「オンラインゲームビジネス」ですが、昨今オンラインゲームユーザーの中で、運営規約に違反して不正行為を繰り返す不正ユーザーが出現しオンラインゲーム運営に支障をきたす例が報告されております。
また不正に伴いユーザーにおけるプレイ意欲の低下、一般社会に対するオンラインゲーム全体へのネガティブな印象付けなどが発生し、こうした状況を改善する必要が求められています。
不正行為はパブリッシャーとユーザーの間で解決されることが基本ではありますが、業界全体としても不正を排除すべく取り組みが重要です。
こうした状況を踏まえ、当協会では効果的な方法を検討してまいりました結果、まずオンラインゲームの中でどういうことが行われているのか、何が問題となっているのかということを情報整理し、オンラインゲームユーザーだけでなく一般の方々にも広く発信していくことが急務と判断いたしました。
オンラインゲーム運営に携わる会員会社に実態ヒアリングを行った結果、各社が蓄積してまいりました不正事例をまとめた本書「オンラインゲーム不正事例報告書」を発行させていただきます。
本書を通じて、皆様のオンラインゲームに対する実態理解の向上に繋がれば幸いです。

社団法人コンピュータエンターテインメント協会  オンラインゲーム委員会
委員長 松原 健二

(目次)
1:「オンラインゲームにおける不正事例の定義」
2:「RMTとは?」
3:「RMT以外の不正事例の代表例」
4:「不正ユーザーの不正をする代表的な理由」
5:「不正が発生、パブリッシャーの一般的な不正対処の代表例」
6:「不正を巡るトラブルの種類」
7:「総括」

1:「オンラインゲームにおける不正事例の定義」
「オンラインゲームにおける不正事例」とは、パブリッシャーの意向やオンラインゲームの内容毎に異なりますが、一般的に「それぞれのゲームの運営規約で禁止されているこ
とを実行すること」全般を指します。
規模の大きさで大別すると、@「パブリッシャー無許諾RMT」に関するものと、A「パブリッシャー無許諾RMT以外で運営規約により禁止されている行為」の二種類に大別さ
れます。

2:「RMTの構造」

「RMT」とは「Real Money Trade」の略称で、「実際の現実社会の現金を使ってゲーム内の仮想アイテムをパブリッシャー以外の第三者から譲り受ける、または譲渡すること」を指します。
家庭用ゲームソフトの場合、ゲーム内の仮想アイテムを購入する際はゲーム内の仮想通貨で購入するのが通常です。
オンラインゲームの場合も家庭用ゲームソフトと同様、ゲーム内で仮想通貨を獲得したり、実際にゲーム内仮想通貨を使用して仮想アイテムを購入することができますが、その他に自分の「ゲーム内分身キャラクター(以下、『アバター』という)」が持つゲーム内アイテムを第三者のアバターに譲り渡したり、第三者のアバターが持つゲーム内アイテムを自分が譲り受けることができる特徴があります。
この相互の受け渡し構造を利用し、オンラインゲームの外のやりとりで実際の現金を介在させ、アイテム授受を行うことを「RMT」と呼んでいるのです。
仮想通貨との対比で「Real Money(現実社会での通貨)」による「Trade(取引)」という特徴からこの名前がつきました。
(RMTの種類)
「RMT」に関しては大きく二種類存在し、「パブリッシャー無許諾のRMT」と「パブリッシャー公認のRMT」があります。
後者は「公認」のためここでは割愛しますが、前者に関しては以下のようなものを指します。
「パブリッシャーが『運営規約』内でRMT行為(ゲーム内アイテム・通貨を実際の現金で売買する行為)を禁止している」にも関わらず、パブリッシャーの関知しない水面下
(オンラインゲームの外)で現金のやり取り、ゲーム内でアイテム等の交換が行われるパターンが主流となります。
そのため、パブリッシャーでも「全体の金額取引の実態」がつかめません。
*注:なお最近では「パブリッシャー無許諾RMT」に派生して、以下のようなパターンも同種事例として確認済みです。
A)一般的に「RMT」はアイテム等のユーザーデータの一部分を交換するのが主流で ある一方、別の手段として「ID・アカウント」等ユーザーデータを丸ごと第三者に
譲渡してしまうケース(第三者が受け取った後にアイテム等をキャラクターから外し、 「ID・アカウント」を捨ててしまう事例)。
B)自分がプレイしていない時間に「ID・アカウント」を第三者に貸与し、代理プレイを実施。獲得したアイテムや経験値、またはプレイ時間に対して対価を支払う「プレイ代行」という事例。

3:「RMT以外の不正事例の代表例」
大きく分けて、以下のような種類が挙げられます。
(ゲーム内不正)
@ゲーム内で不正ツール(キャラクターの自動操作ロボットプログラム)を使用し、 不正ユーザーが自分の労力をかけることなくアイテム・経験値を稼ぐ (通称:BOT行為)。
A正規ゲームクライアントを改変し、本来表示されないデータの表示、クライアントを多重起動する。ゲーム内通貨・アイテムのパブリッシャー無許諾量産(通称:チート行為)。
B不正複製したクライアントの公開(模倣ソフトウェア)。
(モラル欠如)
@キャラクター登録時の不適切な名称付け、ゲーム内での会話で不適切発言を行う。
A各種掲示板にて特定個人への誹謗中傷をする。
(なりすまし)
@不正プレイヤーが自らを「運営者」であると一般ユーザーに語り、一般ユーザーを騙してアイテム等を奪う。
A何らかの方法で一般ユーザーのID・アカウント、パスワードを盗んだ上で、一般ユーザーのアカウントに無断で侵入しアイテム等を剥奪する。
B何らかの方法で一般ユーザーのID・アカウント、パスワードを盗んだ上で、一般ユーザーのアカウントに無断で侵入し他ユーザーへ暴言を吐くなど問題行動を起こし、第三者への名誉毀損等を行う。
C知人間でのID・アカウントの貸し借りを実施し、共有下で不正行為を行ったことによるペナルティーの結果、知人間でトラブルに発展するケース
(その他)
@ID登録時に虚偽の申告をする(存在しない住所・氏名での登録、実在する別人の情報を登録するなど)。

4:「不正ユーザーの、不正をする代表的な理由」 (不正ユーザーの不正をするメリット)
オンラインゲームの中でも、MMORPG等のゲームの場合、一般的に各ユーザーの参加時間が多いほど、また攻略がうまいほどゲーム内の熟練度やアイテム取得が優位に立てる性質があります。
逆に参加時間の少ないユーザー、攻略が下手なユーザーは当然熟練度やアイテム取得が不利な立場にあり、ゲーム内では劣勢に進行します。
しかし多くのオンラインゲームは参加当初が劣勢な状況で、持続的な参加をすることで熟練度・アイテムを獲得しゲーム展開を有利に進めることができるようになる設計を施し
ており、大半のユーザーはこの性質を理解し事前ルール内容に同意した上でプレイしているのが実情です。
ところがこれを解消すべく、(運営規約で禁止されていると知りながらも、パブリッシャーの知らない水面下で)実際の現金によりアイテムを購入・入手すると、ゲーム内の不利
な状況を解消することができます。
時間・労力を伴うことなく有利に進行することができるため、このような動きが自然発生的に起こってしまったというのが背景として考えられます。
またキャラクター能力とは別に、イベント限定・抽選配信アイテム等は、コレクションしたいと考えるユーザーの欲求をかきたて、未入手アイテムを何とか揃えたいとするユー
ザーの思惑を満たす目的で無許諾RMTが行われるケースがあります。
また「BOT行為」「チート行為」については、ゲーム攻略に対する簡略化を図る目的で実行するケースが多く見られます。
更に特殊なケースでは、こうした動きに乗じ、何らかの手段で国内住所・国内メールアドレスを不正取得し、利用対象国・利用対象地域以外の地域からゲームに参加してアイテ
ム獲得、売却することによる闇資金の獲得を目的とした不正ユーザー(業者)も存在し、各パブリッシャーが対策を講じております。

5:不正が発生、パブリッシャーの一般的な不正対処の代表例
不正ユーザーがオンラインゲーム上で不正を働くことで、一般ユーザーがトラブルに巻き込まれたり、不正がそのまま放置されると不公平感を抱く結果となります。
そのためパブリッシャーはオンラインゲーム上での規律を保つ目的で、一般的に「ゲームマスター(以下、『GM』と言う)」と呼ばれるオンラインゲーム運営の監視員を設置し、オンラインゲーム上での不正防止・不正ユーザーへの処罰対処を実施します。
また同時に再発防止に向けた各種防衛策を実施いたします。

オンラインゲーム上ではGMの定期的な監視のほか、一般ユーザーによる不正ユーザーの不正通報を受けて調査を実施。
不正ユーザーが不正を働いたと判断された時点で、各種処罰が実行されます。
処罰の程度はパブリッシャーやゲームの種類にもよりますが、最も重いもので「ID・アカウントの停止」「除名処分」などの厳しい処置がとられる場合があります。

6:不正を巡るトラブルの種類
不正が発生することにより、「パブリッシャー」「一般ユーザー」「不正ユーザー」間の組み合わせで様々なトラブルが発生します。
(一般ユーザー→パブリッシャー間)
不正ユーザーに対する嫌悪感から、運営管理をしているパブリッシャーに対する批判が増大するケースがあります。
(不正の種類にもよるものの)不正に対する対処スピードが一般ユーザー各人の許容を超えることで不満が形成・増大化していく傾向にあります。
パブリッシャーの対策が追いつかない場合、一般ユーザーが関係省庁・関係機関・消費者団体等へ抗議・指導を求める声が上がる場合が挙げられますが、最終的には当事者たるパブリッシャーが対応する案件であり、指導を求めたところで根本的な解決に繋がりません。
また一般ユーザーに対しては、不正対策による弊害としてオンラインゲームに接続しづらくなってしまうといった副作用が伴う場合があります。
(一般ユーザー→不正ユーザー間)
「なりすまし」事例等で、不正ユーザーが一般ユーザーからアイテム等を搾取される事例が挙げられます。
(メーカー→不正ユーザー間)
不正プログラムを使用させないための修正パッチ等の新規開発、厳罰対処等に対する人員の増強化。
(不正ユーザー→パブリッシャー間)
不正ユーザーが処罰を受けた際に、処罰の軽減化を求めパブリッシャーに対し理不尽な要求を行う例が報告されています。
(不正ユーザーと不正ユーザー間)
例えば「パブリッシャー無許諾のRMT行為」等が該当し、「不正ユーザーと不正ユーザー間」トラブル事例として大きく二種類存在します。
@「アイテム等提供者とアイテム等購入者における売買が円滑に成立。但しその後その行為がパブリッシャーに判明し、ゲーム内でペナルティーを受けるケース」
A「アイテム等提供者が購入者から現金を取得後、アイテムを渡さずに逃げてしまう(あるいはアイテム取得後、現金を支払わない)詐欺行為」
*上記はいずれもパブリッシャーが運営規約上で禁止している場合が多く、当然のことながら売買成立如何に関わらず、行為が判明次第「運営規約違反」として処理されます。

7:「総括」
オンラインゲームは家庭用ゲームと異なり、人と人とがコミュニケーションを図りながらゲームを進める特徴があります。
そのため、これまで家庭用ゲームに親しんできた日本のゲームユーザーにとっては勝手が違う部分があり、こうした不正事例を巡るトラブルに対し免疫が無いという点においても更なるトラブルに巻き込まれてしまう要因となっていると考えられます。
実はこの問題は「対人トラブル」という観点から、かつての「オレオレ詐欺」「振り込み詐欺」等に代表される、現実社会のトラブル構造と非常に良く似ています。
こうしたトラブルを回避する際何が有効だったかを考えると「トラブル事例を数多く知ること」「騙そうと企んでいる悪意ある人間の手口を把握し危機管理意識を持つこと」が最も効果的だったのは皆さんが良くご存知かと思います。
ゆえに人が介在するオンラインゲームでは、こうしたトラブルが伴うのは宿命であり、これを最小限に食い止めるために日々パブリッシャーがトラブル防止対策を進めていることをご理解下さい。
当協会と致しましては、こうした各パブリッシャーの取り組みをバックアップしつつ、オンラインゲームをプレイされるユーザーの方々が快適にプレイできるよう、これからも情報発信してまいる予定です。

以上


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